静かな世界観を訪ねて ①
2026.6.21
取材協力/深林珈琲
取材協力/深林珈琲
2026.Jun-July
48号 巻頭特集
忙しい毎日の中で、ふと立ち止まりたくなる場所があります。
風の音や鳥の声に耳を傾けながら、ゆっくり珈琲を飲む。
そんな時間が似合う場所には、
そこをつくった人の価値観や生き方が自然と滲んでいるように思います。

山の時間に身をゆだねる
心惹かれた建築との出会いから始まった「森林珈琲」。
この場所に流れる穏やかな時間とその魅力を辿ります。
山野の風景に溶け込むように佇む「 森林珈琲 」。
この店には 、時の流れをゆっくりほどいてくれるような空気感があります。
店主・岡田さんが 、この場 所を選んだ1番の決め手は、この佇まいでした 。
1950年代の建築様式を残した空間は、コーナーに連続する 窓を 配した 設計が印象的です。今では耐震面からほとんど見られなくなった意匠ですが 、細やかな 造作からは、当時の建築文化の美意識が確かに伝わってきます。
岡田さんが 店 を 構 えるまでの道のりは長く、この場所に出会うまでに費 やした時間はなんと10年 。
古い工場建築や味わい深い空間を 訪ね歩きながら 、気になる物件を写真に残し、時には交渉も重ねてきたそうです。
思い描いていたのは、佇まいと、車が 行き交う通り沿いではなく少し道を入った先にある静かな環境 。
そのどちらも妥協せずに探し続けて、ようやく出会ったのがこの場所でした 。



選ばれた時間の過ごし方
窓の向こうに広がるのは、晴れの日も 、雨の日も 、季節ごとに違う表情を見せてくれる山々 。自然の移ろいを ダイレクトに感じられるのも、この場 所で過ごす醍醐味のひとつです 。
ここにいると、頭の中を 占めていた考えごとや雑音が遠のき、余計なものが削ぎ落とされていくような気持ちになるといいます 。確かに 、何 かをするためではなく、ただのんびり過ごすための時間。肩の力が抜 け、自分の感覚を取り戻していくような心地よさが あります。
岡田さんの言葉を借りるなら、
「脳みそがふにゃふにゃになる感じ(笑) 」 なのだそう 。
提供される珈琲もまた、岡田さん自身の感覚を軸に選ばれています 。強すぎずすっきりとした口当たり 。
各地で出会った豆を試しながら辿り着いた 、飲みやすさを大切にした一 杯 です 。
体に負担をかけないよう甘さを控え たスイーツも 、そんな珈琲に寄り添存在。
どちらも主 張しすぎず、穏やかな時間をよ豊かにしてくれる組み合わせでした 。



奥の部屋では、時折小さな イベントも開かれますけれどそれは、場所を貸す感覚とは少し違うもの。気心の知れ た人たちと一緒につくる楽しい時間の中に、自然と誰かが混 ざっていく。そんな関係性の延長線上にあるこの部屋は、人と人が自然に交わり、新しいつながりが生まれるハブのような存在です。

好きなものに忠実で、丁寧に想いを積み重ねて育ってきた場所 。
余計なことを手放していくのにふさわしい場所。
森林珈琲には、人それぞれの居場所になれるような魅力がありました。
森 林 珈 琲
福山市山野町山野3796-1
10:00~17:00火曜・水曜日定休
不定休あり
@shinrin_coffee